ネット麻雀「天鳳」で月間TOPになった話
よく自己紹介を求められる際に「趣味は?」と聞かれると「麻雀」と答えている。そのほかにも映画鑑賞や読書や食べ歩きなど人ほどには好きなものあれど、そのどれもが自分の性格を表すほどには至っていないと感じる。でも麻雀だけは特別。僕の麻雀は僕自身であると断言できる。
1.はじめに
2022年2月末の話。毎月ごとに発表されるネット麻雀「天鳳」の月間ランキングでTOPになった。特上卓:東南戦:1位「こんにゃく大臣」。麻雀愛好家8,292人の頂点にその月において立った。
参照:https://tenhou.net/sc/2022/02/
天鳳とは、最高峰の対戦麻雀サイト。
累計登録ID数は6,278,760人に及び、その麻雀力に応じて、段位が授けられる。10級から始まり、対戦成績に応じて付与されるポイントをベースに初級まで辿り着くと、そこからは初段から十段まで。最後に天鳳位があるという段位システム。
ちなみに月間TOPになった「特上卓」は、「一般卓」「上級卓」に続く卓で、段位でいうと四段以上(R:1800以上)の中級者から上級者が集まる卓。なかなかの猛者に囲まれてのTOPはやはり嬉しかった。
そして、TOPになったことはもちろん、これまで何となく向き合ってきた麻雀を通して、気づいたことがいくつかあったので、メモ代わりに文章にして残しておくことにした。
そしてこれから読み進む前に予め断っておきます。長文・駄文にて失礼します。
2.2020年までの麻雀
どうしてこんなに麻雀が好きなのかを考える事なく、大学時代から定期的に麻雀を打ってきた。月間TOPになっているのを見ると昔から連戦連勝を重ねていたと勘違いされるかもしれないけれども、決してそんなことはなく適度に勝ち、適度に負けていた。謙遜もあるけれど、人よりほんのちょっと強いくらいの麻雀力。
月間TOPになるくらい麻雀を突き詰めたのは2020年に始まったコロナ禍の最中に、いくつかの出来事があったからで、これはもう単純な麻雀好きを通り越して、自分の一部になっていることに気づいてしまった。そんなお話。
僕の趣味が麻雀だと伝えると、おおよそ腕に覚えのある人は「では今度一緒に打ちましょう」となる。そして、一度麻雀卓を囲むと、その人となりが何となく伝わってくるから面白い。
それは「普段主張を強く押し出すように感じていた人も、実は控えめな人なんだな」とか「この人は芯もしっかりしていて、やっぱり思う以上に強い人だ」とか。おおよそ、それまでのおつきあいの中でその人に抱いていた印象とは異なる新しい発見をすることが多く、それが楽しかった。相手をよりよく知れる時間。
きっと僕も相手に何かしらの印象を与えていて。勝敗にこだわりを強く持っているわけではなく、社交ツールとして麻雀がある印象からか、「良く人を見てますね」とか「言葉巧みに感情を揺らしてきますね」などの感想を言われるケースが多かった。「思った以上に真面目ですね」もちろん「狡猾」なども。
少しだけ強くて、気分を害することなく社交として付き合ってきた「麻雀」
この「麻雀」の部分を「お酒」に置き換えると分かりやすい人もいると思う。そんな付き合いがコロナで劇的に変わった。
初対面の人はおろか友人とさえも麻雀を酌み交わせない日々。「あーー、麻雀打ちたいなぁ」と思ったところでやれる事はネット麻雀でぽちぽちとひとりで孤独にクリックするだけ。
そんな折、古くからの麻雀友達から「今度ネット麻雀サービスで個室を設定できるらしいので、そこで時間を合わせてネット上ですけど、一緒に打ちませんか」とお誘いを頂いた。2020年5月。ちょうど緊急事態宣言で世の中が完全に閉じ切っていた時間。そこがターニングポイントだった。
3.コロナ禍で始まったネット麻雀の会
2020年5月から2022年4月までの2年間。コロナ禍にしびれをきらした麻雀好きな仲間と毎週金曜日深夜に時間を決めて集まり、オンラインサービスのdiscordでそれぞれの顔を映し、イヤホンでオンタイムにお酒を呑みつつ話しながら、さながらいつもの雀荘のように数時間興じる。それぞれ東京や時に岩手。僕は京都や金沢から繋いで麻雀に興じた。新しい雀荘の在り方さえも感じ、コロナの閉塞感も相まってそれはそれは楽しい時間。
しかし、、、
これがよく負けるようになった。。
当初は今日は運が悪かったなとか、酒を飲み過ぎていたとか、何かしらの外部要因に負けの理由を押しつけていたけれども、いよいよそんな事だけで負けが込むほど稚拙なゲーム設計になっていないのは、当の本人が一番良く分かっていて。。
ヤバいな、、、オレ弱いな。。
と思う事が増えてきた。もちろん、相手をしている友人も完全に腕に覚えのある猛者ゆえ、そうそう簡単に勝たせてくれないのは分かってはいるが、このままずっと、この調子で佳きものか。いや良くない。
では、これまでどうしてあまり負けが込まなかったのかを考えてみた。それはまさしく社交として麻雀を捉えていたので「おしゃべり」や「場の作り方」で勝っていたにすぎなかったのだ。しかしネット麻雀のように受け取る情報が制限される場所では、「おしゃべり」も「場の作り方」もその作用が半減してしまう。
人のちょっとした仕草に「この牌は危険だな」と感じる事も、その危険な牌に対して「それ危ない牌よねぇ」などとしたり顔でひと言挟みながら、相手の表情を読むことも「(それまでおしゃべりだったのに)突如として無言で圧をかけながら進行を進める」なんてリアルな戦場では出来ていた事ができなくなった。
負けが続いた原因を突き詰めると。
露呈されたのは単純な「麻雀の技術力不足」だったのだ。
4.弱さを受け入れる事ができなかった話
そこから初めて麻雀を技術という視点で見るようになった。友人の牌譜に始まり、YOUTUBEなどであるような麻雀動画の解説をしっかり聞くなど。
とにかく社交で麻雀が打てたらよいと思っていたが、負けを認める事がすなわち、そこから先の明るい未来を見えづらくする事が気に食わなかった。言い過ぎてるように見えるけれども、例えば20年や30年後に歳を取っていても続けていたいものとして「麻雀」があったときに、「あんまり強くないけれども好きなんですよぉ」と悠長に言っている自分を想像すると心底ガッカリした。コレは良くないなと。そんなの「なんでか知らないけれどもいつも負けないお爺さん」として居たいよなと。
であれば強くなることでしか解決されない課題と感じ、自分なりにいろんなものを吸収してみた。
そこで気づかされたことが「押し引き」と「着順へのシビアな対応」。
「押し引き」とは、相手のリーチなどに対して自分の手を進めるのか降りるのかの判断。割とここを間違えていたと動画を見ながら感じる事が多かった。自分の手がさほど高くないのにやみくもに上がることに執着して、相手の高い手に打ち込むことがあったなと反省。上がりたいこと(欲求や願望)と上がれること(現実や叶えられる未来)の違いへの気づき。
「着順へのシビアな対応」も然り。「麻雀は1着をとるゲームだ」と考えていたけれども、今ある現状を見定めてひとつでも上の順位を目指すことにしっかりと腰を据える。もう少し言うと、ひとつ上の順位が目指せないのならば、今ある順位を守る打牌選択を行う。現実は甘い夢を簡単に叶えさせてくれるほど軟な場所ではない気づき。
気づいたらそれをネット麻雀で実践し、少しづつ改善を見せてゆくようになっていった。統計というか数字と言うのは、とても正直なもので。こんな感じ。
BEFORE(2020年11月)
段位:四段
レート:1910~1950
AFTER(2022年4月)
段位:七段
レート:2090~2130
単純に段位が三段も上がった。その三段分がどれぐらいかは下記ご参考いただきたい。天鳳の各段位在位数や、その平均レートをまとめたものだけれども、一目瞭然。四段は在位数が9,323人もいるのに、七段はその5分の1ほどの2,186人。いま目指してる八段にいたっては、そんな七段の3分の1にも満たない705人。
一体どこを目指してるのかと問われると「死ぬまで麻雀が強く、面白いままで居続けていたい」と答えたい。不思議に強い爺さんへの道。ココまで来てようやく麻雀は自分の一部で、大事なモノなんだと感じるに至った。
5.今とこれからの話いわゆるまとめ
単純に題材が「麻雀」なだけであって、きっと自分にとって大事なものは強度を失ってはいけない事なんだと気づけたのが大きかった。
そして一番大きな気づきは「技術が無いものに発想は叶えられない」という視点。どれだけ良い発想や着想を得ても、技術力が無いと全く日の目を見ない、どころか痛手さえもこうむるという事。自分の今を良く見つめ、その度量や器量含めた技術力を下地に進むことでしかないのだと身をもって感じられたことは、何にも代えがたいことだった。仕事の面においても、技術不足の解消にと参考書や書籍を読む機会も増えたし、それまでほとんど部下にお願いしていた企画書づくりなども自分で進める事も増えた。
欲張り過ぎず、一歩一歩着実に技術で自分を高める事でしか、
手に入れたい未来は叶えられないものなんだという気づき。
コロナを通して、多くの人が言う「意外とコロナも悪くないよね」というのは、こういう気づきを与えてくれる時間として話していることが多いのではないだろうか。取捨選択としての時間や、自分にとって大事なものを再度見つめ直し組み上げてゆく時間。
自分にとってもそう感じることが多い。仲の良い友人はコロナを通じて、公私ともに濃い時間を過ごす事が増えた。それまではお互いの近況報告をさかなにお酒を酌み交わす程度だったのが、時にそれぞれの悩みや課題を時間をかけて打ち明け、それを解決するためのアイデアを話し、実践しながら時につまづきつつも、手にしたい未来を掴みにいっているように感じるし、仕事も本当に向き合うべき課題感の強いものに導かれるようになった。斜陽産業になりつつあるメーカーさんの海外戦略を一緒にイチから考え直すお手伝いや、直近までお手伝いしていた市長選挙も、とにかくこれまでの時間を見直し、未来に対して組み上げてゆく時間として捉えている。そういう意味ではコロナが与えてくれたものも十分にあると感じている。
たかが麻雀。されど麻雀。
月間TOPになったことで、得たのはその勲章よりもそれまで築き上げてきたプロセスを再構築し、再度自信を持てるようになったことだった。いつだって変われるんだなとも思えたのも嬉しい。きっとまた諸所で挫ける事があるだろうけれども、そんな折はこの投稿でも見直してやり直せばよいのだと思えたら良いなとさえも。
ということで、移住してきた金沢でもお相手いただける方などいつでもお声がけください。社交も心得ているつもりですので、楽しい時間を共に過ごせると嬉しく。そろそろ雀荘でも打てるようになってきたと思うので、よろしくお願いします。